明日はホワイトデー。だからというわけでもないが、兄夫婦と姪のさくらに夕食をごちそうする。せっかくなので「回らない寿司」である。というのも、昨日パチンコで6万円勝ったからだ。全く、この歳にしてあの球戯にハマるとはね。ビリヤードを僕に教えたのも兄なら、パチンコに誘ったのも兄である。ともあれ、最近やっと一人でパチンコホールに入れるようになった遠藤(弟)である。
先日(3月1日)などは、珍しく土曜が休みで、豪快に朝寝坊を楽しんでいると、遠藤(兄)からTEL。「今から並びに行くぞ(笑)」とのこと。何のことやらわからぬままに、レガシーで拾ってもらい、着いたのはおなじみ厚木市船子にあるパチンコホール。イベントとやらで、ずらずらずらっと人が並んでいる。要するに、入店する順番を決めるくじを引くための行列だそうで、かねてより僕は、こんな行列に並ぶのはどこの駄目人間かと軽蔑していたのだが、まさか自分がその仲間入りをするはめになるとは思ってもいなかった次第である。兄は384番、僕は385番の整理券をちょうだいして並んでいると、あにはからんや知り合いを発見。吉岡さんといって、遠藤兄弟にとっては旧知の球仲間である。こんなところで久々にお会いするとは。昔からビリヤード仲間にはパチンコ好きが多かったけど、さもありなんである。
抽選で、兄は早々に入店。首尾よく『新世紀エヴァンゲリオン』の台を確保(基本的に遠藤兄弟は、エヴァが打ちたいのである)。僕はといえば、相変わらずの細さで兄に遅れること約300人分。当然、人気のエヴァは満席で、僕としてはエヴァが打てないならさっさと帰って原稿作成を(実はこの時も、結構〆切間際だったのだ。編集の小林さん、ごめんなさい)しようと思っていたのだが、兄がまあまあと言いつつ僕を座らせのは『宇宙戦艦ヤマト』の台であった。さして打ちたくもないヤマトに、仕方なく1万円札を挿入。見る間に球は消えてゆく。アニメの内容は熟知しているので、演出はまあまあ楽しめる。が、当たらない。古代進が森雪の肩に手を回せばひっぱたかれるは、アナライザーは酔っぱらって倒れるは、森雪のお尻を触りそこねるは、波動砲は不発に終わるはで、あっと言う間に2枚目の諭吉を挿入。これまたぼろくそにやられて溶解。「自衛艦より駄目な宇宙戦艦」だの「地球滅亡まであとわずか」だのとメールを送信するのが精一杯。とりあえずこれで駄目なら僕は撤収だと、5千円を挿入。「地球滅亡まであと5千円」とメールを打って、かつパチンコを打つ。やはりというか何というか、みるみる球は呑み込まれていき、残り千円というところで、「本日をもって地球は滅亡致します。46億年という短い間ではございましたが、ご愛顧ありがとうございました」とメール送信。と、ここで何やら、ヤマトの攻撃が成功した様子。すると、次から次へと作戦が奏功し、いわゆる確変という状態に。一気に2万6千円取り返し、浮いた時点で即終了。心底助かった気分で台を離れるたのは正解であった。正午に座って、席を脱したのが3時頃か。パチンコというのも時間がかかる遊びである。ああ疲れた。
さて兄はと言えば、やはり2万円以上呑まれ、もう一枚挿入という辺りで反撃に成功したらしく、夕方には実家へ行って、遠藤(父)の退院祝いを予定しているにも関わらず、ひたすら台は球を吐き出し続ける。何度も母からの電話に応対した挙句、とっぷりと日も暮れた午後7次過ぎにようやく終了。ちゃっかり兄に2万も小遣いをもらい、2人して実家へ。全くもって駄目な兄弟である。
それにしてもパチンコの描写でこんなに字数を使うようでは、ビリヤードライター(自称)の遠藤(弟)の立場も、危うい限りである。困ったものだ。
ともあれ、昨日は一人でホールに行き、座った椅子も暖まらぬうちに大当たり。その結果として、兄の家族と4人で寿司食い放題である。上限を決めて遊ぶ限り、パチンコというのも捨てたものではなさそうである。
『日本怪談集〈幽霊編〉・〈妖怪編〉』(ともに今野圓輔編著・現代教養文庫)。かなり以前に、古本屋で見つけたもの。いわゆる怪談話を集めたものだが、創作ものを排除した、きわめて淡々とした内容だけに不気味な怖さを感じる2冊。他の人には何でもない話が、僕にとっては非常に恐ろしく思える、という断片が多く収録されていて、時たま取り出して読んでは、その感覚を味わう本である。例えば「ジャンジャン火」というのがある。紹介すると、
「…奈良県(中略)に十市城趾がある。十市遠忠が(中略)松永弾正に攻められて憤死したところである。その怨恨が今も残って、雨の今にも降りそうな夏の晩、この城趾に向かってホイホイホイと二度三度叫ぶと、城趾の方から火の玉がものすごく飛んできて、ジャンジャンとうなりを立てて消え失せる。これを見た者は二、三日熱にうかされるという。村人はこの火をホイホイ火といって恐ろしがっている」
「また同じものを(中略)、今も遠忠の恨みが残って、時々火の玉となって山頂に現れる。もしそれに向かって『オーイ』と呼びかけると、ジャンジャン音を立て、だんだん火の玉は大きくなりながら追いかけてきて、呼んだ者を焼き殺してしまう。これをホイホイ火と名付ける。ある時、ひとりの武士がその火を退治に行ったが、兜に噛み付かれて死んだ。また、ある相撲取りも退治に行って、からだ一面蜘蛛の糸のようなものに巻かれて死んだ。なお、誰に限らず、かの城趾に登る者は、必ず何か落とし物をしてくるという」
とまあ、さして何でもないエピソードだが、正直僕はこれがかなり怖い。蒸し暑い夏の夜に、遠くの山に見える小さな明かりが突如自分に急突進してくるイメージがリアルに浮かび、怖くてたまらないのである。とりわけ、ジャンジャンという音が怖い。不思議だ。